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現地レポート

エピローグのない物語 RSS

2016年1月12日 19時58分

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2016年元日に開幕した「東日本大震災復興支援 第91回天皇杯・第82回皇后杯 全日本総合バスケットボール選手権大会(以下、オールジャパン2016)」も、昨日の男子決勝戦をもって幕を閉じた。

5年ぶり9回目の天皇杯を下賜されたアイシンシーホース三河

5年ぶり9回目の天皇杯を下賜されたアイシンシーホース三河

5年ぶりに天皇杯の頂点に立ったアイシンシーホース三河は選手全員が赤色のシューズを履いていた。それを提案した㉜桜木 ジェイアール選手は「昨年のリベンジ――赤色をチームカラーとした千葉ジェッツに初戦で敗れている――の意味が込められている」と記者会見で語ってくれた。⑭金丸 晃輔選手がすぐに「いや、赤はジェイアールが好きな色だからだ」と笑いを取ったが、それでも「全員で統一した意識を持つことができた」と、その提案を受け入れたことも明かしてくれた。
鈴木 貴美一ヘッドコーチが同チームを率いてから初めてとなるオールジャパン初戦敗退は、スタイルの見直しや結束力をこれまで以上に高めたチームを作りだしたと言える。

3年連続20回目の皇后杯を下賜されたJX-ENEOSサンフラワーズ

3年連続20回目の皇后杯を下賜されたJX-ENEOSサンフラワーズ

3連覇をJX-ENEOSサンフラワーズの㉑間宮 佑圭選手が言う。
「『またJX-ENEOSか……』と思われる方もいるかもしれません。でも私たちはそういったプレッシャーを背負いながら、優勝を目指して厳しい練習をしてきました。その努力の結果が優勝という形で表すことができて安心しています。今大会はチームの強さを前面に出せた、納得のいく大会でした」
勝っても負けても、結果だけでは語れないチームの物語が、それぞれにある。

敗れた者たちは皆どこかに悔しい思いを抱えて、大会会場を去っていく。もしかすると優勝したチームの中にも、自分の力を発揮できなかった、今年もメインコートに立てなかったなど、どこかでそれに似た思いを抱えている選手だっているかもしれない。でもそうした悔しい思いがまた、次の章へと続く重要な伏線となる。

オリンピックイヤーの2016年、女子日本代表チームはリオデジャネイロオリンピックで世界に挑む

オリンピックイヤーの2016年、女子日本代表チームはリオデジャネイロオリンピックで世界に挑む

勝負の世界、誰もが目指すのは勝利だろう。しかし一方で敗者が生まれるのもスポーツの常である。
ウルグアイの前大統領、ホセ・ムヒカがこんなことを言っている。
「敗北者とは闘いを辞めた人のこと。人間は強い生き物であり、多くのことを乗り越えられます。悪いことは良いことを運んでくれるのです」(『世界でもっとも貧しい大統領 ホセ・ムヒカの言葉』佐藤美由紀著 双葉社)
スポーツの負けが悪であるかどうかは別にして、選手が強い生き物であり、戦いをやめなければ、その負けを乗り越えて、次の勝利に結びつけることは、間違いなくできる。

オールジャパン2016で敗れたチームの選手たちは、話しを聞いた誰もが「悔しい」と口にしていた。それが大学生であれ、普段は母親として家事・育児と仕事、そしてバスケットの3つをバランスよく頑張っている人も。もちろんトップリーグの選手も、だ。

男子日本代表チームはFIBAオリンピック世界最終予選へ

男子日本代表チームはFIBAオリンピック世界最終予選へ

「悔しさ」は次の目標への原動力となる。しかしその原動力に瞬発力があっても、継続する力がなければ目標に到達はできない。

オールジャパンだけを見れば、次回大会まで既に1年を切っている。その間に各カテゴリーの大会、トップリーグのプレーオフ、そして今年はリオデジャネイロオリンピックもある。昨年、出場権を勝ち取った女子日本代表チームはリオのコートで、FIBAオリンピック世界最終予選で出場権獲得を目指す男子日本代表チームは世界のコートで力を存分に発揮し、新しい自分を発見することで、それが次の目標達成の一里塚となる。

オールジャパン2016は結びの場面を迎えたが、選手、コーチ、スタッフ、そしてバスケットファンたちがそれぞれに紡ぐバスケットの物語にエピローグはない――。

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挑み続けるシューター RSS

2016年1月11日 20時00分

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理想と現実はそう簡単に合致してくれない。しかしそれに挑み続けることで成長の道は広がっていく。

「第91回天皇杯・第82回皇后杯(以下、オールジャパン2016)」は大会最終日、7日目を迎え、男子決勝、アイシンシーホース三河とリンク栃木ブレックスの一戦は89-73で、アイシン三河が5年ぶり9回目に天皇杯を下賜された。チーム史上、またプロチームとしてオールジャパン初優勝を目指したリンク栃木は、最後の一歩が出ずに道を閉ざされた。

21得点を挙げたリンク栃木ブレックス㉕古川 孝敏選手

21得点を挙げたリンク栃木ブレックス㉕古川 孝敏選手

リンク栃木のシューター㉕古川 孝敏選手は、

「失点が89点で、リバウンドも取れなかった。そのうえ自分たちの得点も伸びなかった……そのままの結果だと思います。守れないし、走れないでは自分たちのバスケットはうまくいかないですよね」

と敗戦を認める。

大会を通じてチームの自信の根源ともなってきた「泥臭さと我慢」も出しきれなかった。それは、アイシン三河がそれを出させなかったと言ったほうがいいかもしれない。

「悔しいですよ。特に決勝戦で負けることは本当にもったいない。当たり前のことですが、その悔しさを次につなげたいし、借りは絶対に返しますよ」

古川選手が反撃の矛先として捉えるのは、アイシン三河だけでなく、同じく日本を代表するシューター、アイシン三河⑭金丸 晃輔選手にもある。むろん彼だけを見据えているわけではない。東芝ブレイブサンダース神奈川⑭辻 直人選手やトヨタ自動車アルバルク東京の⑯松井 啓十郎選手など、日本代表クラスのシューターはすべてライバルである。しかし直近の日本代表活動でやりあった金丸選手が同じコートに立てば「負けたくない。やらせなくない。でも俺はやってやる」という気持ちを抱える。

アイシンシーホース三河⑭金丸 晃輔選手(右)とのマッチアップがお互いの力を引き上げていく

アイシンシーホース三河⑭金丸 晃輔選手(右)とのマッチアップがお互いの力を引き上げていく

昨年9月に行なわれた「第28回FIBA ASIA男子バスケットボール選手権大会」では、大会直前に金丸選手がケガのためチームを離脱。古川選手は日本のシューターとして活躍したが、「金丸選手がいたらとか、辻選手がいたらと思われたくはないし、もし彼らがいたとしても、シューターのポジションは自分のものにするつもりだった」と語っていた。同じシューターでもプレイスタイルは異なる。それだけに単純に比較されたくなかったし、それ以上に自分がポジション争いを勝ち取る気持ちを強く持っていたのだ。

しかし、だからこそ彼らに対して「常に負けたくない思いはあるし、攻守においてアグレッシブに、激しくプレイするという点では自信がある」と古川選手は言う。

オールジャパン2016の決勝戦では「いかにあいつを止めるか……乗らせたくなかったので、自分のオフェンスよりもディフェンスのことを考えていました」と言い、古川選手の21得点に対して、金丸選手を19得点に抑えている。数字だけを見れば古川選手の勝利だが、チーム自体が負けているし、個人としても決して満足をしていない。それはアジア選手権での思いと重なる。

「(アジア選手権は)最高の結果ではなかったですけど、ここ数年のなかでは結果が上向いた大会。その大会でゲームに出て、自分のプレイができた自信と、一方で気づけるところもたくさんありました。だからこのままでいたくないという気持ちが芽生えたんです」

今回は敗れたが、勝ちと負けを重ねることで、チームとしても、個人としてもプレイの領域は広がっていく。それは理想が現実に、少しずつではあるが、近づいていくことでもある。リンク栃木の、そして日本の得点力はそうして磨かれていく。

金丸選手の優勝インタビューをベンチで聞く古川選手。その悔しさを今後に生かしたいところだ

金丸選手の優勝インタビューをベンチで聞く古川選手(ベンチ左から2番目)。その悔しさを今後に生かしたいところだ

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謙虚さが導く頂へ RSS

2016年1月10日 19時33分

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自信と慢心の差は紙一重である。反省のない自信は、たちまち慢心へと変わってしまう――作家・池波 正太郎が『霧に消えた影』という作品で、そう書いている。その点でいえば、彼女の心に余裕を生んでいるものは慢心ではなく、純粋なまでの自信だと言っていいだろう。

「第91回天皇杯・第82回皇后杯(以下、オールジャパン2016)」は6日目、女子最終日を迎えた。女子決勝戦、JX-ENEOSサンフラワーズとデンソーアイリスとの一戦は83-44でJX-ENEOSが勝利し、3年連続20回目の皇后杯を下賜された。

19得点を挙げたJX-ENEOSサンフラワーズ⑩渡嘉敷 来夢選手

19得点を挙げたJX-ENEOSサンフラワーズ⑩渡嘉敷 来夢選手

JX-ENEOS⑩渡嘉敷 来夢選手は優勝の喜びをこう語る。

「優勝できて本当に嬉しい。日頃から厳しい練習をしているので、それが形になってよかったです」

厳しい練習の成果なのか、はたまた彼女の身体能力の高さなのか、国内では向かうところ敵なしだが、相手チームはもちろん彼女の高さ、強さに抗うための手段をあれこれと講じてくる。デンソーは原則的に⑧髙田 真希選手が1対1で守りながら、必要に応じてダブルチームにいく作戦で臨んだが、「ボールを持たれる前に、自分の前に出てくる足を止められなかった」と髙田選手は悔やむ。

渡嘉敷選手はそれについて「どんな相手であっても、自分を守ろうと前か後ろを取ってくれば、自分は常にその逆側を取ろうと考えています」とシンプルに対処した。

それよりも愛知・桜花学園高校の先輩であり、女子日本代表のチームメイトである髙田選手とのマッチアップでは、彼女をいかに止めるかを考えたという。そして「止めたときは『ヨッシャ!』って思いました」と笑うのだ。

デンソーアイリス⑧髙田 真希選手とのマッチアップが、渡嘉敷選手を高めていく

デンソーアイリス⑧髙田 真希選手とのマッチアップが、渡嘉敷選手を高めていく

「髙田選手とのマッチアップは昨日からすごく楽しみにしていました。オールラウンドの先駆けというか、先にインサイドもアウトサイドもできる選手になったのは髙田選手ですし、彼女から学ぶことは多いです。それがまた楽しいんです」
自他ともに認める「(渡嘉敷選手は)左ドライブが苦手。だから彼女の右側に立って(右ドライブをさせずに、左ドライブをさせるように)守ろう」という相手ディフェンスのシフトを髙田選手も敷いてきた。しかし渡嘉敷選手はそれさえも苦手なプレイを克服するチャンスと捉え、

「相手チームに感謝ですよね」

と口にする。こうした謙虚な姿勢こそがチームメイトやコーチ陣、そして多くのファンからの共感を得て、彼女をさらなる高みへと導いていくわけだ。

「常に上を見ているので、すべてのプレイにおいて課題はあると思っています。たとえばドライブでシュートを決めても、ドライブの姿勢が高いとダメ。もっと低い姿勢でドライブしないといけないと思うんです。周りの人からは『得点が取れているからいいじゃないか』って言われますけど、自分はそうではなく、そうした小さいところも追求していきたいんです」

この境地に至るまでの道のりは決して平坦でなかった。プレイができないほどのケガもあり、国内外の猛者たちに弾き返されもした。イラつき、ゲームを壊したこともなかったとはいえない。
しかし、そうした苦い経験を無駄にせず、下を向くこともあったが、渡嘉敷選手は後ろを向かなかった。
これからも彼女の前に平坦な道はない。それでも日本の至宝は振り返らずに、世界の頂を目指す。

日本の至宝は常に世界の頂を目指す

日本の至宝は常に世界の頂を目指す

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