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現地レポート

謙虚さが導く頂へ RSS

2016年1月10日 19時33分

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自信と慢心の差は紙一重である。反省のない自信は、たちまち慢心へと変わってしまう――作家・池波 正太郎が『霧に消えた影』という作品で、そう書いている。その点でいえば、彼女の心に余裕を生んでいるものは慢心ではなく、純粋なまでの自信だと言っていいだろう。

「第91回天皇杯・第82回皇后杯(以下、オールジャパン2016)」は6日目、女子最終日を迎えた。女子決勝戦、JX-ENEOSサンフラワーズとデンソーアイリスとの一戦は83-44でJX-ENEOSが勝利し、3年連続20回目の皇后杯を下賜された。

19得点を挙げたJX-ENEOSサンフラワーズ⑩渡嘉敷 来夢選手

19得点を挙げたJX-ENEOSサンフラワーズ⑩渡嘉敷 来夢選手

JX-ENEOS⑩渡嘉敷 来夢選手は優勝の喜びをこう語る。

「優勝できて本当に嬉しい。日頃から厳しい練習をしているので、それが形になってよかったです」

厳しい練習の成果なのか、はたまた彼女の身体能力の高さなのか、国内では向かうところ敵なしだが、相手チームはもちろん彼女の高さ、強さに抗うための手段をあれこれと講じてくる。デンソーは原則的に⑧髙田 真希選手が1対1で守りながら、必要に応じてダブルチームにいく作戦で臨んだが、「ボールを持たれる前に、自分の前に出てくる足を止められなかった」と髙田選手は悔やむ。

渡嘉敷選手はそれについて「どんな相手であっても、自分を守ろうと前か後ろを取ってくれば、自分は常にその逆側を取ろうと考えています」とシンプルに対処した。

それよりも愛知・桜花学園高校の先輩であり、女子日本代表のチームメイトである髙田選手とのマッチアップでは、彼女をいかに止めるかを考えたという。そして「止めたときは『ヨッシャ!』って思いました」と笑うのだ。

デンソーアイリス⑧髙田 真希選手とのマッチアップが、渡嘉敷選手を高めていく

デンソーアイリス⑧髙田 真希選手とのマッチアップが、渡嘉敷選手を高めていく

「髙田選手とのマッチアップは昨日からすごく楽しみにしていました。オールラウンドの先駆けというか、先にインサイドもアウトサイドもできる選手になったのは髙田選手ですし、彼女から学ぶことは多いです。それがまた楽しいんです」
自他ともに認める「(渡嘉敷選手は)左ドライブが苦手。だから彼女の右側に立って(右ドライブをさせずに、左ドライブをさせるように)守ろう」という相手ディフェンスのシフトを髙田選手も敷いてきた。しかし渡嘉敷選手はそれさえも苦手なプレイを克服するチャンスと捉え、

「相手チームに感謝ですよね」

と口にする。こうした謙虚な姿勢こそがチームメイトやコーチ陣、そして多くのファンからの共感を得て、彼女をさらなる高みへと導いていくわけだ。

「常に上を見ているので、すべてのプレイにおいて課題はあると思っています。たとえばドライブでシュートを決めても、ドライブの姿勢が高いとダメ。もっと低い姿勢でドライブしないといけないと思うんです。周りの人からは『得点が取れているからいいじゃないか』って言われますけど、自分はそうではなく、そうした小さいところも追求していきたいんです」

この境地に至るまでの道のりは決して平坦でなかった。プレイができないほどのケガもあり、国内外の猛者たちに弾き返されもした。イラつき、ゲームを壊したこともなかったとはいえない。
しかし、そうした苦い経験を無駄にせず、下を向くこともあったが、渡嘉敷選手は後ろを向かなかった。
これからも彼女の前に平坦な道はない。それでも日本の至宝は振り返らずに、世界の頂を目指す。

日本の至宝は常に世界の頂を目指す

日本の至宝は常に世界の頂を目指す

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