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現地レポート

タツノオトシゴの執念 RSS

2016年1月9日 20時48分

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ゲーム終盤に追いつかれて延長戦に入ることほど嫌なことはない。そんな嫌な空気を“チームの成長”が勝利に変えた。

「第91回天皇杯・第82回皇后杯(以下、オールジャパン2016)」は5日目。男子準決勝、トヨタ自動車アルバルク東京とアイシンシーホース三河の一戦は、トヨタ東京が終了間際に追いついて延長戦にもつれこんだ。このまま勢いに乗ったトヨタ東京が優位に立つかと思われたが、延長戦の5分を制したのはアイシン三河。94-87で勝利し、3年ぶり12回目の決勝進出を果たした。

チームの勝利に貢献したアイシンシーホース三河③柏木 真介選手

チームの勝利に貢献したアイシンシーホース三河③柏木 真介選手

「ディフェンスとリバウンドで我慢すること。オフェンスではタフショット(難しいシュート)を打たず、相手のチームファウルをうまく突けたことが勝因だと思います」

アイシン三河のベテランガード、③柏木 真介選手は延長戦での勝利をそう振り返る。昨年7月下旬に左ヒザの手術を行い、当初は走ることも、踏ん張ることもできなかったという。ダッシュとストップを繰り返すバスケットでは致命的なケガと言っていい。それでも今大会にあわせて調整してきたヒザの状態は、「走ることもできたし、踏ん張ることもできた。この『踏ん張ることができる』ってことだけでもプレイの幅は広がります。やっと体が追いついてきた感じですね」と言う。

彼のカムバックは大きい。チームにとってももちろんだが、熱いハートとハッスルプレイでチームを引っ張るポイントガード⓪橋本 竜馬にとっても大きい。

「僕が柏木さんのことを評価するのもおこがましいですけど、それでも彼が帰ってきてくれたことは心強いです。思い切りプレイできますから」

ファウルアウトした⓪橋本 竜馬選手(右)が、柏木選手に後を託す

ファウルアウトした⓪橋本 竜馬選手(右)。柏木選手に後を託す

橋本選手はこの試合でファウルアウトをしてしまったが、しかしそれは決して熱さゆえの空回りではない。

「(鈴木 貴美一)ヘッドコーチからも『相手にイージーなシュートを打たれるくらいならファウルをしてでも止めろ』と言われています。もちろんファウルをしないようにしなければいけないわけですけど、それでも柏木さんがいるから思い切った判断ができます。⑬菊地(祥平)選手へのファウルも、③(ジェフ・)ギブス選手へのファウルも、そういう意味では後悔はありません」

柏木選手自身は「こんな場面(第4ピリオド 残り1分14秒)でファウルアウトするなよ」と思ったそうだが、それでも走れるヒザ、踏ん張れるヒザがあればチームに貢献ができると自らを信じた。

加えてチームの成長こそが今日の勝利につながったと、柏木選手は言う。

試合中にプレイの確認をする⑭金丸 晃輔選手(左)と比江島 慎選手

試合中にプレイの確認をする⑭金丸 晃輔選手(左)と比江島慎選手

「これまでの負けの経験があるからでしょう。追いつかれても若い連中がハッスルしてプレイできていました。⑭金丸(晃輔)も⑥比江島(慎)も、もちろん竜馬も、みんなでチームとしてどうしなければいけないかを、コートの上で声をかけられるようになっています。それは彼らの自覚だと思うし、それがチームの成長だと感じますよね」

昨年のオールジャパンでは、初戦で敗れるという憂き目を見ているアイシン三河。その悔しさを糧にチームは成長を遂げてきた。柏木選手が決勝戦に向けて語る。

「久々の決勝戦ですが、挑戦者として40分間戦い抜きますよ」

ベテランが復帰し、若手が自覚を持ち始めた挑戦者の執念は、4年間閉ざされていた固い扉をこじ開けることができるのか。男子決勝戦が楽しみである。

トヨタ自動車アルバルク東京も㉔田中 大貴選手の3Pシュートで追いついたが、あと一歩及ばず

トヨタ自動車アルバルク東京も㉔田中 大貴選手の3Pシュートで追いついたが、あと一歩及ばず

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どんなときも RSS

2016年1月9日 14時55分

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痒い所に手が届く。そんなプレイヤーがいるとヘッドコーチは計算がしやすい。相手チームにとっては嫌な選手でもある。しかしそんなユーティリティーなプレイヤーも、ファウルトラブルには手も足も出せなかった。そのあたりは課題と言ってもいい。

「第91回天皇杯・第82回皇后杯(以下、オールジャパン2016)」は5日目。女子準決勝、シャンソン化粧品シャンソンVマジックは、JX-ENEOSサンフラワーズに52-79で敗れた。シャンソン化粧品㉕井澗 絢音選手は「JX-ENEOSはインサイドの2人(⑩渡嘉敷 来夢選手と㉑間宮 佑圭選手)が攻めてくるのはわかっていたのですが、前半から彼女たちを止められなかった」と、敗因に挙げた。その言葉どおり、アジアを代表するインサイドでもある渡嘉敷選手が20得点・10リバウンド、間宮選手が27得点・16リバウンドを記録すれば、相手チームの勝利は遠のいてしまう。

ユーティリティーな活躍をするシャンソン化粧品 シャンソンVマジック㉕井澗 絢音選手

ユーティリティーな活躍をするシャンソン化粧品 シャンソンVマジック㉕井澗 絢音選手

それでもシャンソン化粧品に勢いがあるのは、⑥本川 紗奈生選手が女子日本代表チームで自信をつけ、⑫三好 南穂選手と㉒河村 美幸選手が、それぞれアウトサイドとインサイドで力を発揮できているからだ。彼女たちの成長は大きい。しかしそこで忘れてはいけないのが、井澗選手の存在である。愛知・桜花学園高校を卒業して2年目のプレイヤーだが、味方が攻撃しやすくなるようなスペースを作ったり、逆に守る位置を的確に取ることで、相手の攻撃を防ぐこともできる。いわば“玄人好み”の選手だが、そういう選手がいるチームは強い。

「チームには得点を取る選手がいるので、自分としてはチームに流れを作ることが役割だと思っています。特にチームメイトの足が止まったときなどは、動くことで流れはできるので」

井澗選手は自分のプレイスタイルをそう語る。それは桜花学園高校だけでなく、名古屋市立若水中学校時代から教わってきたことだ。いかに味方のスペースを作り、相手のスペースを消すか。

それだけではない。井澗選手は174cmと決して大きくないが、それでもリバウンドに飛び込む積極性を持っている。これもまた、シュートを落とした選手を叱るのではなく、リバウンドに行かなかった選手を叱る、中学時代のコーチの教えが染みついているのだろう。

「オフェンスもディフェンスもリバウンドへの意識は常に持っています。リバウンドを取るために動くことで、自分のリズムも生まれてきます」

JX-ENEOS戦ではファウルがかさみ、リバウンドに積極的に飛び込めなくなった。それがチームの勢いをもうひとつ加速させられなかった要因でもある。ファウルをいかに抑えるか、これは彼女の課題だろう。

「あとはシュート力。シュート力がつけば、ディフェンスを引き寄せてパスをすることもできます」

終盤にマッチアップしたJX-ENEOSサンフラワーズ㉓大沼 美琴選手も同じタイプの選手

終盤にマッチアップしたJX-ENEOSサンフラワーズ㉓大沼 美琴選手も同じタイプの選手

自分の持ち味と、克服すべき課題をどう結びつけていくか。

JX-ENEOSにも同じような選手がいる。㉓大沼 美琴選手だ。彼女もまた痒い所に手が届く選手で、元々スペーシングやリバウンドを持ち味とする。ただ大沼選手はそこにシュート力を身につけ、プレイの幅を広げている。井澗選手の目指すところも、彼女が意識しているか否かは別として、そうしたところになるだろう。

昨年はケガのためオールジャパンのコートに立っていない。初めてのオールジャパン準決勝で、序盤にマッチアップしたのはJX-ENEOSが世界に誇るポイントガード⓪吉田 亜沙美選手。そんな緊張しそうな場面でも「特別に思うところはなかったかな……」と苦笑いを見せる井澗選手。そんな図太さというか、あっけらかんとしたところも彼女の魅力である。
それでいて、痒い所には手が届く。最後までそれを貫ける選手がいるチームは強い。

終盤にファウルアウトした井澗選手。今後はファウルをどう抑えるかが課題の一つ

終盤にファウルアウトした井澗選手。今後はファウルをどう抑えるかが課題の一つ

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帰ってきた日本の大黒柱 RSS

2016年1月4日 22時36分

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やはり彼は日本を代表するセンタープレイヤーだ。その存在感は際立っていた。

「第91回天皇杯・第82回皇后杯(以下、オールジャパン2016)」は4日目。男子準々決勝、NBL10位の広島ドラゴンフライズは、NBL2位のリンク栃木ブレックスに、84-86で惜しくも敗れた。

広島ドラゴンフライズの大黒柱⑩竹内 公輔選手

広島ドラゴンフライズの大黒柱⑩竹内 公輔選手

その広島でゴール下を支配する⑩竹内 公輔選手は、昨年5月9日に行なわれた「NBL2014-2015 プレーオフ・クォーターファイナル」のリンク栃木戦で右足のアキレス腱を断裂した。しかし手術とリハビリの末に11月7日の西宮ストークス戦で復帰を遂げている。そして今大会にもチームの大黒柱として、広島のペイントエリアを支配していた。

「できれば昨年のように決勝で日立(サンロッカーズ)東京とやりたかったのですが、日立東京も負けてしまったし……。それでもベスト4には入りたかった」

現在、NBLのシーズンでは苦しい順位だが、トーナメント形式のオールジャパン2016ならばチャンスはある。チーム創設初年度で決勝まで勝ち進んだ前回大会の再現をすべく、前日に千葉ジェッツを破った勢いにも乗り、今シーズンのリーグ戦で連敗をしているリンク栃木に対して、「大方の予想は栃木(の勝利)だったと思いますが、番狂わせを起こしてやろう」と狙っていた。しかし彼の目論見はあと一歩、いや半歩だけ届かなかった。

それでも前半の21点ビハインドを、一度はひっくり返すことができたのは収穫である。リーグ戦でトヨタ自動車アルバルク東京を破り、東芝ブレイブサンダース神奈川とアイシンシーホース三河には敗れたものの、競り合いの展開に持ち込めたことがチームの自信となって、今日の展開を生み出したのだと竹内選手は言う。

彼自身に再び視点を戻せば、「復帰当初よりは間違いなく動きはよくなっているし、そうじゃなければ悲しいですよ」と言えるくらい、調子をつかんできている。6か月のリハビリ期間は決して無駄ではなかった。むしろ周囲から無駄だと思われそうな期間に、自らの可能性を伸ばしていった。

彼のリバウンド面の貢献は広島だけでなく、男子日本代表にも不可欠だ

彼のリバウンド面の貢献は広島だけでなく、男子日本代表にも不可欠だ

「(ケガをしていた6か月は)気持ち的にリラックスのできた期間でした。バスケットができないことはわかっていたので、リフレッシュというか、普段は日本代表活動で一緒に過ごすことのできない家族と一緒に過ごすことができました。また男子日本代表がいい結果を出したことも僕にとっては大きかった。もちろん自分もその場にいたかったという思いもありましたが、彼らの頑張りから自分もリハビリをもっと頑張らなければという、復帰に向けたエナジーをもらったんです」

だからこそ、リーグ戦もさることながら、オールジャパン2016でも家族のために、勇気をくれた仲間たちの前で「竹内公輔はここにいる」と証明したかった。勝敗だけでいえば、それは準々決勝で途絶えたわけだが、それでも彼の存在感は間違いなく日本のバスケット界に、改めて示すことができたはずである。

光は闇があるからこそ、その存在が認められる。敗れはしたが、ケガという闇の時期を乗り越えた竹内選手から放たれたものは決して派手さはなかったが、広島に、そして男子日本代表に欠かせない、力強い光だった。

2人がかりで止められる竹内公輔選手。リーグの後半戦に巻き返しを誓う

2人がかりで止められる竹内公輔選手。リーグの後半戦に巻き返しを誓う

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